免許について本気出して考えてみた:2 医師免許証よりいっそ…

前回,「今度こそ,おめでとう」と書いてはみたものの,働かねば食っていけぬ。就職活動を行うことにしよう。
ここでその子細を述べようとすれば,マッチングだの医局だの,はたまた派遣会社だの地域医療格差だの,いろいろなことに触れなければならなくなってしまう。今回のテーマはあくまでも医師免許証についてなので,事務的な書類のやり取りに絞って述べる。
何だかいろいろなことがあったその後,縁あって某病院にお世話になることが決まる。病院は通常保険診療を行っているので,アナタは自分が「医師」であってかつ「保険医」であることを証明せねばならぬ。つまりは

  1. 医師免許証
  2. 保険医登録証

の2つ*1を示せばよい。
さて,それらがどんなブツであるかだが,医師免許証については既にななこ先生が紹介されているので繰り返さない。一つだけ付け加えておくと,紙のサイズは「コピーせよ」と言わんばかりの,ジャストB4サイズである。保険医登録証は県によって違うかもしれないし,ある意味医師免許証以上に重要な書類であるので詳しく述べぬ。手にしたときのがっかり度は医師免許証の比ではない*2とだけ言っておく。
さて,医師免許証は東京新聞によれば

 厚生労働省は一九七二、八五年に、医師を採用する際は免許の原本と大学の卒業証明書で確認するよう通知を出している。だが、同容疑者の勤務先はコピーによる確認しか行っていなかった。医師免許はB4判で、氏名、本籍地、生年月日、国家試験合格年度、医籍登録番号、交付年月日などが記載されている。「透かし」が入っているので原本の偽造は不可能だという。

とのこと*3である。いずれにせよ,これでアナタの氏名,生年月日,医籍登録番号は病院の知るところとなったワケで,厚生労働省によれば

 国民から医師等の資格の確認の照会を受けた場合、現行では、氏名、生年月日、登録番号の3つの情報がそろった場合に、医籍等への登録の有無を回答する取扱いとしている。

ので,病院は「その気になれば」アナタが偽医者かどうか確認することができる*4
逆に言えば,医師免許に記載されている個人情報はこの程度で,医師免許証はおよそ身分証明書としてはその用をなさない。医師が自分が医師であることを証明するのは,だからなかなか難しいことである。ななこ先生が書かれていたように,厚生労働省は医師免許証をICカード化することでコレに対応しようとしたが,医学教育振興センターのブログのコメント欄によれば,この話は立ち消えになったらしい。だからこそ,

 医療機関の管理者は、その医療機関で診療に従事する医師等の氏名を医療機関内に掲示することが義務付けられており、医療機関に勤務する医師等については、現行の院内掲示により資格の確認が可能である。しかしながら、それ以外の医師等についても資格の確認を行う必要がある場合があり、そのための手段が必要であるとの声がある。
(中略)
 そこで、現行のように限られた場合ではなく、国民が医師等の資格の確認ができるよう、何らかの改善を図る必要がある。具体的には、3つの情報が全てそろっていなくても、例えば氏名だけでも医籍等への登録の有無を回答する取扱いとすることが考えられる。この場合、個別の照会に回答する取扱いのみとすると、36万人余りの医師等に関する照会に対応するには膨大な事務負担が伴うことが予想されるため、現実的には、弁護士の資格のように、ホームページ上で氏名等により資格の確認を行うことを可能にすることが適当である。

ということにもなったのだろう。
だが,それはかえって問題を複雑にするだけではないかと思うのだ。氏名だけでも資格の確認を行うことを可能にするということは,逆に言えば,氏名が本当であれば資格があるものと回答されてしまう可能性が出てくるということだ。ならば,発想を逆にしてはどうか。つまり,個人情報を持っている医師自身が,その個人情報を元に,「自分が」医師であることを厚生労働省に認めてもらってはどうか
実際,医師免許証に書かれている事項以上に,医師の個人情報を厚生労働省は把握している。というより,把握されることが,医師法に定められた医師の義務である。

第六条  免許は、医師国家試験に合格した者の申請により、医籍に登録することによつて行う。
2  厚生労働大臣は、免許を与えたときは、医師免許証を交付する。
3  医師は、厚生労働省令で定める二年ごとの年の十二月三十一日現在における氏名、住所(医業に従事する者については、更にその場所)その他厚生労働省令で定める事項を、当該年の翌年一月十五日までに、その住所地の都道府県知事を経由して厚生労働大臣に届け出なければならない。

これらの事項を記載して,それこそ都道府県知事経由で「医籍に登録されていることの証明書」厚生労働大臣名で発行していただくというのは,できない相談だろうか?都道府県知事経由だから,その際「保険医に登録されていることの証明書」も一緒に申請できれば,更に確実だろう。
医師とて義務だから申告しているので,現住所その他もろもろ*5を,好んで提出しているのではない。そしてその調査にも,もちろん国民の税金が使われている。医師本人にも社会全体にも有効な活用法だと思うのだが,いかがだろうか?

*1:医師でなければ保険医になれないハズで,今回の事件で保険医登録証について全く触れられていないのは,かなり不思議なことである。

*2:ということは,もっと偽造されやすそうということでもあるのだが。

*3:実物を見ると,とてもそうは信じられぬのだが。

*4:が,実際にはしていなかったというのが,今回証明されたワケだ。厚生労働省としても「すれば答える」と言ってはいても,全ての場合について照会されることは想定していなかっただろう。

*5:診療科とかいくつかあったのだが,覚えていない。