Sinistra

id:kimuchimilkさんの「利き手に関するあれこれ」のコメント欄にトラックバック。ご質問,順番に答えてみますね。

ポインタが右利き仕様とは思いもしませんでした(と、じっと目の前のポイントを見つめる)。ポインタが左上に向いているのがやりづらいということですか?

矢尻よりも,シャフトが右側にあることが問題です。マウスで一定区間をドラッグする場合,通常右利きの方は普通右から左にマウスを転がすと思います。左手でマウスを操作すれば,当然これは左から右になります。つまり,動かそうとする先が常に矢印で隠れた状態になるのです。
図に引き出し線を入れるといった,正確さが必要な作業で終点が見えないというのは致命的ですから,一旦わざと行きすぎてちょっと戻したり,一旦確定させてから動かして微調整といった作業が必要になります。
ついでに言うと,左手でマウスを左から右に動かすというのは,マウスを「押す」感覚なのですが,この時ポインタは「引っ張られる」ように動きますね。
一方,マウス操作に関しては左利きが有利な点も一つあります。「左から右に動かすのがデフォルト」というのは,横書きの文章をコピペする時には自然ですね。右利きの方は「終わりから最初にドラッグ」か,「その時はマウスを払う動き」をしているかのどちらかだと思います。これも左利きだから気づくことで,同じように左利きの不便さも,右利きと比べて初めて自覚できることが多いです。

弦楽器習うのは右利きの人と比べて困難だと思いましたか?左利き用ギターもあるようですが、いずれにせよ余り存在を知られていないように思いますので右利き用を使われているのでしょうか。

私の場合は,父の普通のギターの弦だけ逆に張り替えてもらって始めましたので,始めから逆手仕様(ぽーる・まっかーとにー・もーど)です。今は左利き用のギターを使っています*1
ギター,特に軽音楽におけるそれは一般に「目立つ」ことが美徳とされるので,その点では左利きは有利です。ただし,これは他にギターなりベースなりが複数いる場合であって,1人で弾いている分には,ギター弾き以外に左利きと気づかれることはまずありません。もっとも,狭いステージにたくさんの弦がいる場合,「ネックでチャンバラ」になることがよくあるので,自分はよくてもバンドメンバーにはうざられがちです*2 *3
習得という点で言えば,左利きの人は右利きのギターを右利き風に持つのが一番有利だと思います。最初は違和感があるでしょうが,ギターに限らず弦楽器は「利き手でない方をよく動かす」ものですし,その表現もほとんどネックに依っていますので。更に,左利き用のギターなどというものは通常店に置いていません。したがって数少ない左利き用モデルを注文するか,特注するかしかないワケです。これには以下の問題があります。

  1. 楽器は生き物であり,エレキにすら個体差がある。購入前に試奏できないのは致命的である。
  2. 量産されている左利き用のギターは,あったとしても,その会社の製品でもっとも売れている1〜2モデルのみである。値段にして5〜7万クラスのモノが大半であり,初心者には少々お高く,中級者以上には物足りない。
  3. 量産品の左利き用のギターは1〜2割程右利き用より割高である。
  4. 特注品は特注であるだけに当然高い。のみならず,製作する方もいつもと勝手が違うワケで,必ずしも「いつも通りをその逆に」作れるとは限らない。結果として「外れ」を引く可能性が高くなる*4
  5. 量産品・特注品を問わず,中古として楽器屋に売ろうとすると,「需要が少ないから」と,あり得ない位安い値段で買いたたかれる。納得のいく値段で嫁に出そうとするなら,委託販売でもまず無理で,オークションにかけるくらいしか方法がない。要は「買えば高く,売れば安い」。

私は一応右利き用のギターでもコード弾き位はできますが,どんなに気に入ろうとそれを買うことはできません*5。買う気がないのが店員にも分かってしまうので,結構辛い所です。

仕事で使用される刃物は左利き用なのでしょうか?その場合右利き用よりもお値段が高いのでしょうか?ああ、不思議な世界。

左利き用の解剖バサミなるものを持ってはいますが,使ったことはありません。値段は右利き用の倍だったと思います,確か。
解剖と限らず子供の頃から右利き用のハサミを左手で使っていたので,私の場合は左利き用のハサミの方に違和感があります。確かに理屈で言えば「刃先を見ずに切る」ことになるのでしょうが,それ程問題はないと思います。
問題はメスの方です。私は替刃のメスを使っていますが,替刃は刃を左側に向けて抜き差しするようになっています。したがって,左手で刃を交換しようとすれば,手に刃先を向けながら*6交換することになります。
これでは危険極まりないのでわざとメスをひっくり返して裏から刃を交換するようにしていますが,やりにくいことこの上ありません。業者に「左利き用のメスはないのか?」と聞いてみたこともありますが,「その気になればメスは作れるが,替刃がない」という返事でした。そりゃそうだなorz
最後に解剖とは違いますが,刃物で左利きにもっともストレスなのは,何と言っても「バターナイフ」だと思います。多分なぜだか分からないと思うので,試しに左手でバターを塗ってみて下さい。ナイフを放り投げたくなること確実だと思います。

*1:右利き用と左利き用のギターがどう違うのかは,弦楽器の経験がある方なら説明しなくても何となく理解していただけると思うが,経験がない方にはどれだけ説明してもピンと来ないと思う。一応説明すると,持ち方が逆になるので,弦の順番も逆になる。これにともなって,弦のピッチ調整(一弦ごとの弦長)や,ボディ左右の強度差も反対になる。外見だけが反対なのではない。

*2:自分たちが自分たちの都合でステージセッティングできれば問題ないが,複数のバンドが同じアンプを使用するような場合(アマチュアではそれが殆どなワケだが)は,なかなかそうはいかない。

*3:逆に左利きが右端に立てば,ステージを広く使うことができるようになる。これはビートルズが多用した方法で,ジョンとポールが一本のマイクでハモれるのは,ポールが左利きだからこそである。もっとも,だからビートルズのライブでは,ジョンとポールがほとんど常にステージ中心に立ちっぱなしである。リンゴのドラムも当然ステージ中央にあるので,元々薄いジョージの影は,ますますカメラから外れがちである。

*4:が,何しろ特注であるので,当然引き取らないワケにはいかない。

*5:逆に衝動買いの可能性もないので,むしろ助かっているとも言える。

*6:つーかむしろ,刃先を持って(痛