解剖の勉強の仕方が分からないアナタのために

先日非常勤講師をさせていただいている看護学校で試験をやっていただいた。試験なんて私も含めていい思い出がないのが常であるが,やる方にとってもけっしていいモノではない。

試験終了後に,何人かの学生からメールでタイトルのような相談をいただいた。試験が終わってから言われるのも,実に切ないものであるが,以下の一文を学校宛に送り,掲示を依頼した。皆様のご批判を仰ぎたく,以下転載させていただく。ご笑覧いただければ幸いです。



 何人かから,メールで悩みを告白されましたが,正直言って,授業中に述べた以上にいいアドバイスは思いつきません。ほとんど繰り返しになりますが…

名前から入ってはイケナイ!

 解剖学用語は無数にありますが,それは全てナニかがあるからそれに名前をつけているのです。ナニがあるか知らないのに,その名前だけを覚えようとすることは,「どんな人も来院する可能性があるから,世界中の人全部の名前を覚えよう」と言うのと同じくらい無意味です。

まずは図を書いてみよう!

 だから,とりあえず図を書いてナニがあるのか見てみましょう。教科書の図を写していたら,どれも細かくてイヤになりますね。でも,そんな中でもあなたがまず描こうとするものは,図の中でもそれなりに強調されているもののハズです。そこから自ずと重要なものが絞られて来ることでしょう。

常に既存の知識と結びつけよう!

 といっても,細いけれど大事な血管もあれば,小さいけれど大切な臓器だって,もちろんあります。ですが,それらが小さいのに大事だとしたら,それは正常であれ,病的にであれ,ナニか大事なコトに関係しているからのハズです。ということは,その名前は,教科書の他のページや,他の科目の教科書にも,必ず出てくるハズです。一度で全てを覚えられる人はいません!重要なことは何度も出てくるからこそ重要なので,それが何度も出てきたということを自覚できることこそが,イチバン必要なことなのです。

 どんな患者さんも,イロイロな悩みを抱えています。体が痒くて,何もしていないのにだるくて,食欲がないのに体重が増え,気分はふさぎがちで,入院が長引き今にもリストラされそうで,明るかった奥さんは最近見舞いに来てはため息ばかりつき,子供の学費の話ばかりする今日この頃です。でも,そうなった真の原因が肝臓にあって,そこからイロイロな問題が生まれているのだということ,個別の問題にはイロイロ対処の仕方があっても,その全てが真の原因に対してもいい対処法ではないということ,時には一見かえって辛くなるようなことでも,それが真の回復につながることもあるということ,なぜそのシンドイことが真の回復につながるのかということが,患者さんには解りません。それが解るから,皆さんはプロなのですし,それを伝えられるから,皆さんはナースなのです!



 皆さんの悩める日々が,何時か実を結び,その助けとなりますように。

 確信し,心より健闘を祈ります。