医師倍増計画:Chapt. 2 ヒト

TPOも考えず,医学生倍増のシミュレーションを続けよう。
我が身と我が周囲を見る限りとてもそうは思えないが,医学生になるのは結構難しいこととされているらしい。人数が決まっているから難しいので,定員が増えればそれだけ医学生になるのも簡単になるに違いない。そこで今回は,医学部の定員が2倍に増えることで,世の受験生を一喜一憂させるかの「偏差値」がどの程度変化するのか調べてみることにする。
旺文社によれば,今(平成17年度)まさに奮戦中の大学受験生は,69万1千人程度であるそうである。一方,厚生労働省によれば,平成16年度の医学部の入学(募集)定員は7625人であった。自信がない面倒くさいので,以下受験生70万人,医学部入学定員7千人として話を進める。
さて,70万人中7千人ということは,言い換えれば受験生の100人に1人が医学生になるということである。理系文系の別など受験生個々の状況を一切無視し,かつ受験生のトップクラスがもれなく医学部に進学するとすると,その偏差値は73.3(以上)に相当する。このとき,定員が2倍になれば偏差値は70.5まで下がる。*1
学術研究の世界では,ある集団(ケース)がp<0.05すなわち偏差値70以上*2であれば,元の集団(コントロール)と「差がある」といってよいことになっている*3が,しかし偏差値73はどう見ても高すぎる。高すぎることが,かえって医学部神話が神話でしかない*4ことを証明していると言えるかもしれない。そして,偏差値73を高いと見るなら,「医学部の定員が2倍になれば医学生は最早エリートではない」ということも,同時に認めなければならないだろう。
それが望ましいことか嘆くべきところかは,また別として。
References

  1. 正規分布の利用例
    http://www.kwansei.ac.jp/hs/z90010/sugakuc/toukei/kihon0/basic0.htm
  2. 偏差値とT得点
    http://aoki2.si.gunma-u.ac.jp/lecture/Bunpu/normdist/hensati.html

*1:一連の計算過程はReferencesの2.を参照されたい。

*2:もしくは30以下。

*3:その基準が妥当である根拠は何もない!

*4:受験生は成績だけで学部を選んでいない!